Mirage's ten episodes.
Part10.=blaze=
もう一度逢いたい。
あなたに逢いたい。
最後に、一度だけ……。
私の中にある、あなたの光が、もうとても細くて
感じることができないのです。
私は、疲れてしまったのでしょうか。
永く歩きすぎて、くたくたになって。
こんなに想いはあふれているのに。
あなたをへの気持ちは、確かなのに。
あなたをもうほとんど感じ取れない。
いつのまにか、あなたの顔も、声も。
そのぬくもりさえ、忘れてしまった。
あなたの光さえ奪われたら、
私はどうすれば良いのでしょう。
あの場所に行きたい。
そうすればきっと感じ取れる。
あなたの眠る地へ行きたい。
なのに手足が動かない。
逢いに行くと。
いつでも、あなたのそばにいると。
約束した。
何度も、何度も。
行かなければならないのに。
もう<その時>が、
すぐそばまできているのに。
なのに私は、動けない。
いかねばならないのに。
誓ったんだ。
この星の最後のいのちが絶えるとき、
告げようと。
約束の言葉を、贈ろうと。
そのために、いままで生きてきたのに……。
息が苦しくなっていく。
終わるのだろうか。
このままここで。
誰か手を貸して欲しい。
あの場所へ、連れていっておくれ。
誰でもいい。
この星に、私しかいないことは知っているけど。
連れていってくれ。
あのひとに逢わせてくれ。
最後に、一度だけでいい。
あのひとに逢わせてほしい。
あなたに逢いたい。
あなたに、……もう一度だけ逢いたい。
お願いです。神様。
そばに、……眠らせてください。
光が見える。
誰もいないはずの扉を、開ける気配がする。
誰かきたのか。
まだ、私のほかに、生きるヒトがいたのか。
ぼんやりかすんで、よく見えない。
懐かしい匂いがする。
どうしたのだろう。光が戻ってきている。
光を感じる。
どうして。
どうして、いまになって、
もういないはずのあなたを。
こんなに……強く感じるのだろう。
どうして、涙があふれるのだろう……。
光のもとへと手を伸ばす。
“彼”が私の手を握りかえす。
つながる手から、思いが流れる。
映るのは、風に舞う桜の花。
微笑んだ横顔。
記憶の底から、光があふれた。
ああ。
逢いに行くと、約束したのに……。
あなたがきてくれたんですね───。